3行解説!
■歴史作家・司馬遼太郎さんには台湾について書いた著書『街道をゆく 台湾紀行』がある■司馬遼太郎さんと李登輝さんの対談で出てきた「長岡藩の家老・河井継之助」■河井継之助が主人公の小説『峠』が2020年に映画化される
司馬遼太郎という日本の歴史小説家をご存知でしょうか。
すでに亡くなっていますが、日本の歴史感に間違いなく影響を与えた方です。
その著書にはあの『坂の上の雲』や『関ヶ原』、『竜馬がゆく』など多数有名作品があります。
司馬さんの作品では戦国時代や幕末が多く描かれていますが、
その中で幕末の悲運の戦士・河井継之助を扱った作品が『峠』です。
本日は『峠』と台湾について少しお話しようと思います。
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小説『街道をゆく 40 台湾紀行』
まず、わたしは司馬遼太郎さんの大ファンです。
後に台湾の方と結婚することになるのですが、
そもそもの台湾に行くきっかけとなったのが、司馬さんの『街道をゆく 台湾紀行』でした。
小説の中では、かつて台湾という島を侵略した日本人の姿、
はたまた台湾の近代化に貢献した日本人の姿、
あるいは台湾を民主化させた蒋経国さんや李登輝さん、
『坂の上の雲』に登場した乃木希典や児玉源太郎らの貢献…
司馬遼太郎好きのわたしとしては、台湾はきっと避けては通れない国になるのだろう。
そう感じ、台湾に行くことを決意したのでした。
小説『峠』
その小説『街道をゆく 40 台湾紀行』の一番最後には、司馬さんと李登輝さんの対談の話があります。
そこで書かれているのが、小説『峠』の話です。
『峠』について、少しご紹介します。
内容
『峠』の主人公は、幕末の長岡藩長老・河井継之助さんです。
継之助は、諸国を回り様々な知識を得た後、長岡に帰ってすぐに藩の改革を急ぎました。
今後の商人の世を見据え、西洋思想を大いに取り入れ、富国強兵に勤めました。
また、継之助はそれまでの常識をくつがえすような取り組みも行いました。
例えば、武士の命である帯刀を禁じ、銃の所持を進めました。
もちろんこれには武士たちが激怒。しかし、継之助はそれでもやめませんでした。
軍事力というのは、いわば他国に対する発言権の獲得でもあります。
それゆえに、刀や個々の力をもってする戦を廃止し、銃による集団戦闘術を取り入れようと考えました。
西洋化とはつまり、封建制度の終わりであり、武士という身分の消滅を意味します。
そのもどかしさは、よき武士であろうとした継之助にわかっていないはずがなかったでしょう。
「戦をしてはならんでや」
長岡藩をどこにも属さない独立国にし、外国と大いに貿易をして世界の舞台へ繰り出そうとした継之助でしたが、
時代がそれを許しませんでした。
長岡はだんだん北上してくる倒幕軍の攻撃にあい、ついに壊滅状態となってしまったのです。
大きな傷を負いながら会津に向かった継之助は、そこで帰らぬ人となってしまいました。
継之助は陽明学の徒でした。
陽明学では、事をおこすこと、成功すること、そして結果を出すこと、そういったことが第一義ではないという思想です。
むしろ、利益を論ずるはその学問のもっとも恥ずべきこととされました。
その第一義は、その行為そのものの美しさにあるといいます。
継之助の人生は、まさに陽明学を体現したものだったのです。
河井継之助と台湾
さて、なぜ司馬遼太郎さんが台湾の運命を河井継之助(長岡藩)に例えたのでしょうか。
それは、時代の暴力的な流れに押し流されてしまった悲運を表現するためです。
かつて台湾は「二・二八事件」で多大な被害を出し、また常に中国大陸の驚異にさらされています。
昨今では、まるで徳川幕府軍と倒幕軍のような武装集団である米中に翻弄される台湾。
わたし個人としても、暴力によって台湾を巻き込んでほしくない。
いっそ長岡藩のように、武装中立国として、世界の国々と同じ立場で渡り歩いてほしいのですが。
映画『峠 最後のサムライ』
先日、本屋で『峠』を見つけた時、「2020年、映画化」なんて帯がついているのを発見しました。
なんと、役所広司が主演で河井継之助を熱演してくれると言うのです。
すでに来年が待ち遠しいところですが、
それまでにもう一度『峠』を読んで映画に備えるとともに、
長岡藩がどうしていれば壊滅することがなかったのか、
台湾の未来を考えながら熟読したいと思います。